イサムノグチの宇宙卵(彫刻家)
1927年、ブランクーシの弟子になったノグチ・・・この彫刻家の最後の作品も「宇宙卵」といえるでしょう・・・
『イサム・ノグチ : 宿命の越境者<上・下巻>・ドウス昌代 著・ 出版2003 講談社』に、「イサムノグチのお墓は卵型である」という情報がある・・・17年後に気がつきました。
ドウス昌代氏の本文から(下P419)
イサムが岡山で、約2メートルの高さの楕円形の万成石を見つけたのは、死去する3年ほど前であった。土から掘りだしたばかりの、まるで地球の卵のような形のその大きな石を見ながら、イサムは傍らの和泉に虚心坦懐に言った。
「ぼく、この中に入ったら、どうお?」
イサムは、卵石の下から三分の一ほどの位置にぐるりと、紅ガラで線を入れた。
「マル」のなかに放置され、その線がかろうじてのこる程度になつたころ、イサムは死去した。和泉は牟礼での追悼の会に合わせ、イサムが入れた線にそって卵石にノミを入れた。
2つに割った石の真ん中に穴を堀り、アイリスからあずかった、イサムの遺骨がはいった壺を納めた。そして、割れ目をまたぴたりと閉じ合わせた。イサム.ノグチのこの墓石には、彼の名前も没年も刻まれていない。 石を割ったときの27のノミ穴の跡がのこるだけである。
藤森照信氏解説から(下P441)
・・・頂上に、玉子形をした身長ほどの大きさの黒っぽくて粗い地肌の自然石が立っている。まるでイースター島のモアイ像のように瀬戸内の海を眺めながらポツンと立っている。
聞くと、ノグチが最も好きだった石で、彫刻はせずに残していたという。この中に人りたい、とも言ったという。その石にはノミの割り跡が水平にわずかに走り、今、ノグチはその中に入っている。
ノグチの魂の入った石が丘の上に立って、タ陽に染まる瀬戸内の光景を挑めている。ビカソのように鋭い眼光と彫刻で鍛えた筋肉質の肉体が、丸みを帯び、小さくなり、精気を最後まで失なわなかっ老年期からしだいに壮年、青年とへて、子供の頃に戻り、そしてこの玉子型の石に帰った。
ノグチは、この玉子型の石のなかで子供に帰っている。子供に帰って、夕陽に染まる海を眺めている。なんだかセッナクなる。
奇しくも、特別展「イサム・ノグチ 発見の道」2021年4月24日から8月29日まで開催
詳細は公式サイト(https://isamunoguchi.exhibit.jp/別ウインドウで開きます)
★