エルサレムの宇宙卵(ヘブライ語聖書)

「世界の始まりの物語 吉田 敦彦 著 出版1994 大和書房」P20に次の解説がありました。

旧約聖書「創世記」1章の天地創造神話の冒頭には、天地かが創造される前の状態が、次のような言葉で描写されていた。

「地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた

この文章の最後に用いられているヘブライ語の表現は、文字通り訳せば「神の霊が巨大な鳥の形を取って、原初の大洋の上で卵を温めていた」ことを意味すると言われる。

そのため多くの専門家は、旧約聖書のこの箇所に、エジプトやフェニキア、ギリシャなど、古代地中海文明圏の方々にあったことが知られている。世界が一個の卵から造られたという神話の影響が認められると指摘している。

西洋で古代というと、4世紀末のローマ帝国滅亡までと言われていますので、ヘブライ語聖書(旧約聖書)全巻成立は、紀元前200年ごろとすれば、古代地中海文明圏の相互交流の真っ只中、「地中海世界」の情報交換の中で編集されたのですね。

「情報交換によって世界はつくりつくられる」

なお、新約聖書に対する旧約聖書と日本では認識されていますが、当のユダヤ教徒の間では、ヘブライ語聖書と認識されており、旧約という概念はないそうです。

さて、ここでは、ヘブライ語テキスト・ヘブライ語の訓み・英語訳・2つの日本語訳を並べてみました。

英語訳と日本語訳は、民間ボランティアの聖書普及委員会が運営する無料オンライン「口語訳聖書+英語訳聖書」から。

  • ב וְהָאָרֶץ הָיְתָה תֹהוּ וָבֹהוּ וְחֹשֶׁךְ עַל־פְּנֵי תְהֹום וְרוּחַ אֱלֹהִים מְרַחֶפֶת עַל־פְּנֵי הַמָּיִם׃(←ヘブライ語先頭)
  • ヴェハーアーレツ ハーイター トーフー ヴァーヴォーフー ヴェホーシェフ アル・ペネー テホーム ヴェルーアッハ エローヒーム メラヘフェット アル・ペネー ハッマーイム
  • And the earth was without form, and void; and darkness was upon the face of the deep. And the Spirit of God moved upon the face of the waters.
    1955年欽定訳聖書(KJV)
  • 地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた
    1955年口語訳聖書
  • 地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が巨大な鳥の形を取って、原初の大洋の上で卵を温めていた

本居宣長の「古事記伝」にある「からごころ(漢意)、いにしへごころ(古意)」に似たものがあります。永遠のテーマ「直訳と意訳の間で…」。


2021年にヘブライ語聖書のギリシャ語翻訳の巻物(おそらくパピルス?)が「恐怖の洞窟」で発見されたそうです。

【3月17日 AFP】イスラエル政府は16日、新たに発掘された約2000年前の聖書写本の断片を公開した。専門家らは、「死海文書(Dead Sea Scrolls)」の発見以来、最も重要な発見だとしている。